「次のイベントや記念配信に向けて、新作のアクリルスタンドや同人誌を印刷所に発注しよう!」
グッズ制作が軌道に乗り始めたクリエイターのカナさん。印刷所に入稿し、クレジットカードで製造代金を先払い決済した際、マネーフォワード クラウド会計の画面を見て次のような疑問で手が止まったことはないでしょうか?
- 「先月クレジットカードから製造費15万円が引き落とされたけれど、グッズが届いて販売を始めるのは今月……この出金は『支払った月』の経費にしていいの?」
- 「勘定科目は『消耗品費』?それとも『仕入高』? そもそも『外注費』との違いがよく分からない」
- 「去年から繰り越した売れ残り在庫もあるし、今年作り足して残った分もあるけれど、この在庫ってどうやって計算して帳簿に反映させればいいの?」
物販を伴うクリエイターにとって、印刷所への発注は「先行投資(前払い)」と「在庫(資産)」が絡むため、経費の計上タイミングや勘定科目の判断が最も狂いやすい領域です。
今回は、なぜグッズ製造代の扱いでミスが起きやすいのかという原因と、マネーフォワード クラウド会計を使って「仕入」と「期首・期末在庫」を正しくコントロールする実務フローを分かりやすく解説します。
ポイント
- 「払った日に全額経費」はNG(費用収益対応の原則): 会計上、販売用グッズの製造費は「今年売れた分だけ」がその年の経費(売上原価)になります。
- 売上原価の正しい計算式: 売上原価は「期首在庫 + 当期仕入 − 期末在庫」で計算します。去年から残っていた在庫を当期の経費に戻し、今年売れ残った分を今年の経費から除外する処理が必要です。
- 勘定科目は「仕入高」を使う: 無料ノベルティや見本品なら「消耗品費」や「広告宣伝費」で即時経費にできますが、BOOTH等で販売して利益を得るグッズは「仕入高」で処理します。
- MFクラウドでのベスト運用は「普段は仕入高 ➔ 年末に期首・期末の振替仕訳」: 日々のカード引き落とし時はすべて「仕入高」として登録し、12月31日に「期首在庫」と「期末在庫」の棚卸仕訳を打つのが最も手数が少なく確実です。
- 日々の在庫高管理:日々の在庫高管理は仕入先ごとにスプレッドシートを用意しそれで日別の”入”と”出”を管理する。
なぜ印刷所の代金をそのまま経費にすると危険なのか?
① 「消耗品費」で処理してしまい、売れ残り在庫が野放しになる
最も多いミスが、印刷所からの請求を深く考えずに「消耗品費」や「外注費」として登録してしまうケースです。
自分の配信用機材や作業デスクなら消耗品費で問題ありませんが、「販売してお金を得る目的のグッズ」は税法上「棚卸資産(商品・製品)」に分類されます。
消耗品費で処理してしまうと、「まだ売れていない在庫」までその年の経費に算入されてしまい、税務署から「利益の過少申告(経費の過大計上)」として指摘されるリスクが高まります。
② 「去年残った在庫」と「今年作った在庫」がごちゃ混ぜになる
グッズ販売を続けていると、「去年売れ残ったアクスタ20個」を手元に抱えたまま、新年を迎えて新作を印刷所に発注することが日常茶飯事になります。
このとき、「去年末に在庫(資産)として経費から外した分」を今年の経費に戻し、さらに「今年末に手元に残っている分」を改めて在庫として資産に振り替えるという手続きを取らないと、確定申告で正しい原価や利益が算出できなくなってしまいます。
マネーフォワードクラウドで迷わない「グッズ仕入&棚卸(期首・期末)」の実務ステップ
物販クリエイターが毎月の手間を最小限に抑えつつ、税務上も完璧に処理するための「年商400万〜500万円・免税事業者向け」の実務ステップを解説します。
※マネーフォワードの事業者設定で「免税事業者」を選択している場合、仕訳入力画面に税区分(10%課税、8%課税、免税等)のドロップダウンは表示されません。支払った金額(税込)のままシンプルに入力・登録します。
基本となる売上原価の仕組み
確定申告書の決算書(収支内訳書や青色申告決算書)では、以下の計算式で売上原価が算出されます。
ステップ1:日常のカード引き落としは「仕入高」で統一する
印刷所への発注代金が事業用クレジットカードから連携されてきたら、勘定科目を「仕入高(または商品仕入高)」として登録します。
| 取引日(仕訳日) | 借方(左側) | 貸方(右側) | 仕訳の説明 |
| カード利用日 (例:7月15日) | 仕入高 150,000円 (補助:印刷所等) | 未払金(カード) 150,000円 | 新作アクリルスタンド100個の製造費(単価1,500円相当)を「仕入高」として記帳する。 |
- 運用のコツ: 平時はグッズが1個売れるたびに原価の仕訳を考える必要はありません。かかった製造費をすべて「仕入高」として帳簿にプールしておきます。
★なぜ「仕入高」にも補助科目をつけるのか?
売掛金の補助科目(BOOTH等)は入金消込のために必須ですが、仕入高に「おたクラブ」「グラフィック」などの補助科目を付けるのは「年末の棚卸計算を圧倒的に楽にするため」です。 元帳を開いたときに「どの印刷所にいくら払って、何を何個作ったか」がすぐに特定できるため、年末に「アクスタの製造原価は1個あたりいくらだったか?」を計算する際、過去の仕入単価を拾い出す手間を大幅に削減できます。

ステップ2:12月31日時点で「手元の在庫(残数)」をカウントする
年末(12月31日)、自宅の作業部屋や保管棚に残っている未販売グッズの数を数えます(実地棚卸)。
【具体例】
- 期首在庫(1月1日時点):旧作アクスタ20個(@1,500円 = 30,000円)※前年末に棚卸資産として計上済みのもの
- 当期仕入(今年発注分):新作アクスタ100個(@1,500円 = 150,000円)
- 期末在庫(12月31日時点の実地棚卸):
- 旧作残り:5個(@1,500円 = 7,500円)
- 新作残り:45個(@1,500円 = 67,500円)
- 合計期末在庫:50個(75,000円分)※
➔ この年の売上原価(経費になる金額)は、
となります。
※前期と今期で仕入れの値段が違う場合でも、原則として(税務署に特に届け出をしなければ)”最終原価法”が採用されるので、残っている同一資産すべてについて直近の仕入れ価格が仕入れ価格として扱われます。
★参考:スプレッドシートで在庫数管理
実務では「スプレッドシート(またはExcel)で残数と原価を計算し、出た合計金額だけをマネーフォワードに入力する」という役割分担を行います。
クリエイター向け:簡易在庫管理シートのサンプル例
年末に以下のようなシンプルな一覧表を作り、期末在庫の合計額を算出します。
商品名 仕入先 ①期首在庫数 ②当期製造数 ③当期販売数 ④期末残数 (①+②-③) 適用単価 ⑤期末在庫評価額 (④×単価) 旧作アクスタ おたクラブ 20個 0個 15個 5個 1,500円 7,500円 新作アクスタ おたクラブ 0個 100個 55個 45個 1,500円 67,500円 同人イラスト本 グラフィック 0個 50冊 30冊 20冊 400円 8,000円 合計 — — — — — — 83,000円 ※販売数はBOOTHの月次レポートから拾い、手元の棚卸残数と突合します。より詳しいスプレッドシートの設計や入出庫管理の実践ノウハウは別記事にて詳しく解説します。
ステップ3:年末に「三分法」の決算整理仕訳を振替伝票で打つ
マネーフォワード クラウド確定申告の青色申告決算書画面には、棚卸高を直接手入力する枠はありません。
12月31日付で、クラウド会計の「手動で仕訳」>「振替伝票入力」から以下の「三分法の決算整理仕訳」を2行(または2伝票)登録します。この仕訳を打つことで、決算書の各欄へ自動的に数字が連動します。(複数仕入先がある場合でもまとめて入力)
| 取引日(仕訳日) | 借方(左側) | 貸方(右側) | 仕訳の説明(三分法のロジック) |
| 12月31日 (期首振替) | 期首商品棚卸高 30,000円 | 商品(棚卸資産) 30,000円 | 前年末に資産計上していた20個分を、当期の売上原価(費用)に算入する。 |
| 12月31日 (期末振替) | 商品(棚卸資産) 83,000円 | 期末商品棚卸高 83,000円 | 今年末に手元に残った50個+20冊分を当期の費用から差し引き、来期へ繰り越す資産に計上する。 |
※複数の仕入先や商品がある場合でも、仕訳行を細かく分ける必要はありません。スプレッドシートで算出した「全体の合計額」を1行で入力し、補助科目は空欄(設定なし)で登録するのがミスを防ぐベストプラクティスです。
この処理で得られる効果
- 期首の残り+今年の仕入から、手元に残った期末在庫を引いた「純粋に今年売れた分」だけが当期の売上原価として正しく集計される。
- 振替伝票を打つだけで、青色申告決算書1ページ目の「売上原価」欄(期首棚卸・仕入・期末棚卸)に正しい金額が全自動で印字される。
- 日常の記帳は「カード明細を仕入高で登録するだけ」で済むため、日頃の配信やグッズ制作のスケジュールを一切圧迫しない。
まとめ
印刷所への先払い代金は、「平時はすべて仕入高として計上し、年末に『期首在庫の戻し』と『期末在庫の控除』を行う」ことで、正確な売上原価が完成します。
このサイクルが身につけば、ロット数を増やして製造単価を抑えた場合でも、税務署からの指摘を恐れずに堂々と確定申告を迎えられます。
仕入と在庫をスッキリ整理したら、次にぶつかるのが「梱包資材・備品購入におけるプライベート決済との混在」です。
「Amazonで発送用のOPP袋を買ったついでに日用品も一緒に注文してしまった……」
「近所の百均で現金で買ったプチプチのレシート、どう仕訳すればいい?」
私用と事業用が混ざりやすい梱包資材・発送備品のスマートな仕分けと、事業主借を使った綺麗な精算方法を解説します。

コメント