BOOTHでのグッズ販売やYouTubeの広告・スーパーチャット収益が順調に伸び、いよいよ月末の帳簿付けを迎えたクリエイターのアオイさん。
「今月も活動を頑張った!」と満足しつつ、通帳やプラットフォームの画面を開いた際、次のような疑問に直面したことはないでしょうか?
- 「BOOTHから口座に振り込まれたのは、利用料が引かれた『94,400円』……帳簿の売上にも『94,400円』と書けばいいの?」
- 「AdSenseの支払明細書を見たら、米国源泉税などが引かれていて確定総額(80,000円)と実際の振込額(79,000円)がズレているけれど、どっちを売上にすればいいの?」
- 「『通帳に入ってきたお金(純額)』だけで帳簿をつけていたら、税務調査で『売上の過少申告』として怒られるって本当……?」
個人で活動するクリエイターにとって、この「手取り金額だけで売上をつけてしまう(純額経理)」というミスは、悪気がなくても税務署から厳しく指摘される典型的な落とし穴です。
今回は、なぜ純額で帳簿をつけると危険なのかという理由と、BOOTHの手数料やGoogleの天引き税額を「総額主義」で正しく処理し、マネーフォワード クラウド会計で月次確定させる実務ルールを分かりやすく解説します。
ポイント
- 税法の大原則は「総額主義」: 売上は引かれる前の「総額」で計上し、引かれた手数料や税金は別建てで認識しなければなりません。
- 純額経理の本当のリスク: 「利益の額(所得税)」自体は純額でも総額でも変わりませんが、「売上の過少申告(除外)」として税務調査で疑われるリスクや、帳簿の証明力・利益率の分析が崩壊するデメリットが生じます。
- 免税事業者の判定(1,000万円の壁)が狂う: 消費税の課税・免税を判定する基準は「引かれる前の売上総額」です。純額で計算していると、知らず知らずのうちに1,000万円を超えていて無申告加算税を取られる事故が起きます。
- BOOTHとAdSenseの科目の違い:
- BOOTH(販売手数料) ➔ 「支払手数料」(事業の必要経費)
- Google(米国源泉税等) ➔ 「事業主貸」(個人の税金前払い分・確定申告で精算)
- MFクラウドでの運用: 月末に控除分を別建てして「売掛金を受取予定額(純額)」にしておくことで、翌月の銀行着金時にAIの1クリック自動消込がそのまま作動します。
なぜ「手取り額(純額)」で売上をつけてはいけないのか?
① 売上総額が過少になり「税務署からの疑い」と「インボイス判定狂い」を招く
所得税法では、取引の全体像をありのままに記録する「総額主義の原則」が定められています。
例えば、BOOTHで100,000円が売れ、5,600円の手数料が引かれて94,400円が口座に入ったとします。このとき売上高を「94,400円」と記載してしまうと、税務署からは「実際の売上100,000円のうち、5,600円分を意図的に帳簿から隠した(売上除外・過少申告)」と疑われる恐れがあります。
さらに重大なのが、消費税の「免税事業者(年商1,000万円以下)」の判定です。
この判定基準となる「課税売上高」は、手数料や税金を引く前の売上総額で計算しなければなりません。手取り額で帳簿をつけていると、「年間売上980万円だからまだ免税だ」と思い込んでいたら、実際は総売上1,050万円でとっくに課税ラインを超えており、後から数年分の消費税と重加算税を追徴されるという悲劇が起こり得ます。
② 「所得税の額は同じ」でも、帳簿の証明力と事業分析が崩壊する
「手取り額で売上をつけても、利益の金額自体は変わらないのだから問題ないのでは?」と思うかもしれません。
確かに、売上と経費が同じ金額だけ相殺されているため、最終的な課税所得(利益)の計算結果そのものは変わりません。
しかし、帳簿の本来の役割は単に税金を計算するだけでなく、「事業の取引実態を正しく証明すること」です。プラットフォームに年間数十万円単位で引かれている手数料や税金を帳簿から丸ごと消し去ってしまうと、以下のような弊害が残ります。
- 税務調査での説明コスト増: プラットフォームが発行する年間支払調書・確定レポートの「総額」と、確定申告書の「売上高」が一致しないため、調査官に対して「これは手数料をあらかじめ引いた純額です」と明細を突き合わせて証明する余計な負担が生じます。
- 本当の利益率が見えなくなる: 「商品原価やプラットフォーム手数料に何%取られて、手元にいくら残ったのか」という損益構造が帳簿から読み取れなくなり、今後のグッズの価格設計や配信活動の事業判断ができなくなってしまいます。
BOOTH&Google AdSenseを「総額主義」で仕訳ける実務ステップ
クリエイターが税務リスクをゼロにし、翌月の口座連携・自動消込までスムーズに流すための実践手順です。
※アオイさん(年商450万〜550万円・免税事業者)の設定に基づき解説します。
プラットフォーム別の「総額」と「控除項目」の対比
| 項目 | BOOTH(物販) | Google AdSense(YouTube) |
| 売上総額(貸方に計上) | 商品代金合計 + 送料 + BOOST | YouTube向けAdSenseの確定収益総額 |
| 引かれるもの(控除項目) | サービス利用料(販売手数料) | 米国源泉所得税・無効トラフィック控除 |
| 費用の性質 | プラットフォーム運営のための「必要経費」 | 事業主個人の「所得税の前払い(外国税)」 |
| 使用する借方科目 | 支払手数料 | 事業主貸 |
| 翌月の受取予定額(売掛金) | 売上総額 − サービス利用料 | 確定収益総額 − 源泉徴収税額 |
実務ステップ:月末に控除項目を組み込んだ「複合仕訳」を打つ
マネーフォワード クラウド会計の「振替伝票入力」を開き、月末日付で控除分を別建てした複合仕訳を登録します。
売掛金を最初から「翌月の口座着金予定額(純額)」に合わせておくのが最大のポイントです。
パターン1:BOOTH売上(手数料5,600円引き・手取り94,400円の場合)
BOOTHのサービス利用料は事業の経費であるため、「支払手数料」として借方に計上します。
| 取引日(仕訳日) | 借方(左側) | 貸方(右側) | 仕訳の説明 |
| 3月31日 | 売掛金 94,400円 (補助:BOOTH) 支払手数料 5,600円 | 売上高 100,000円 (補助:グッズ売上) | 【総額主義+売掛金の純額化】 売上高は総額満額で計上し、引かれた利用料を経費(支払手数料)として計上。売掛金は口座着金予定額(94,400円)とする。 |
パターン2:Google AdSense収益(米国源泉税1,000円引き・手取り79,000円の場合)
AdSenseで天引きされた税金は経費ではなく、個人の前払い税金であるため「事業主貸」として借方に計上します。
| 取引日(仕訳日) | 借方(左側) | 貸方(右側) | 仕訳の説明 |
| 3月31日 | 売掛金 79,000円 (補助:Google) 事業主貸 1,000円 (補助:米国源泉税) | 売上高 80,000円 (補助:配信収益) | 【総額主義+事業主貸での税金分離】 売上高は満額80,000円で計上し、天引き税額は「事業主貸」で事業帳簿から逃がす。売掛金は口座着金予定額(79,000円)とする。 |
※ここで計上した「事業主貸」は、年明けの確定申告時に「外国税額控除」を適用して日本の所得税から差し引いて精算します。

翌月口座着金時のメリット:AIが1クリックで自動消込
翌月20日〜22日頃、銀行口座にお金が振り込まれます。
月末時点で売掛金を「着金予定額」と完全一致させてあるため、マネーフォワードの口座連携画面を開くと、AIが「口座着金額 = 売掛金残高」を自動検知して緑色の消込サジェストを提示してくれます。
| 取引日(仕訳日) | 借方(左側) | 貸方(右側) | 仕訳の説明 |
| 4月20日 (BOOTH着金) | 普通預金 94,400円 | 売掛金 94,400円 (補助:BOOTH) | 口座明細の提案をそのまま「登録」するだけで、売掛金が綺麗にゼロになる。 |
| 4月22日 (Google着金) | 普通預金 79,000円 | 売掛金 79,000円 (補助:Google) | 口座明細の提案をそのまま「登録」するだけで、売掛金が綺麗にゼロになる。 |
入金時に口座連携の明細をわざわざ開いて「手数料や税金を手作業で行追加する」という面倒な編集作業が一切不要になります。
まとめ
クリエイターの収益管理は、「手取り金額ではなく、総売上を満額計上し、引かれた手数料(支払手数料)や税金(事業主貸)を別建てする(総額主義)」が正解です。
月末の売掛金を「手取り予定額(純額)」に合わせておくテクニックを使えば、翌月の入金消込でAIが迷子になることもありません。
総額主義の基本を押さえたら、次に立ちふさがるのが「YouTubeの広告収入・スーパーチャット手数料の把握困難」です。
「配信で1万円分の赤スパをもらったはずなのに、AdSenseの確定画面や通帳を見ると金額が全然足りない……」
「iOSアプリ等経由で投げられたスパチャの手数料(Apple税・Google手数料)はどこで確認してどう仕訳ければいいの?」
複雑怪奇なYouTube収益の内訳を正しく読み解き、帳簿へ美しく反映させる実践テクニックをお届けします

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